肺非結核性抗酸菌症(肺MAC症) / 気管支拡張症について
肺非結核性抗酸菌症(肺MAC症) / 気管支拡張症について
八尾徳洲会総合病院 呼吸器内科部長 北田 清悟
肺MAC症について図や写真を使い、わかりやすく紹介します。
肺非結核性抗酸菌(NTM)症は気道局所のみが障害されるタイプ(結節気管支拡張型)と肺実質が障害されるタイプ(繊維空洞型)の2つのタイプに大別されます。日本で最も多い、人に感染を起こすNTMはMAC (80-90%)で、MACによる肺NTM症を肺MAC症とも呼びます。そのほか、M. kansasiiやM. abscessus といった菌が原因菌になることもあります。
肺NTM症の診断は、学会策定のガイドラインに基づきます。喀痰からの複数回のNTM菌の培養陽性、特徴的な画像所見、臨床症状などの要件を満たし時に、確定診断となります。本邦では、MACに特異的な抗原(GPL抗原 図1)を用い
図1
ELISA法で血清中の抗GPL-IgA抗体を測定する血清診断が開発され、実用化されています(図2)(1,2)。
図2
開発時の多施設研究では抗体価は肺MAC症で有意に抗体価の上昇が認められ、感度 84%、特異度 100%(図3)との結果が得られました(3)。
図3
その結果をうけ2011年に薬事承認され補助診断として臨床現場で広く使用されています。その後多数の施設で検討が重ねられ、メタ解析でも感度約70% 特異度約91%と良好な診断精度が示されました。今後、本邦の診断基準に組み入れられることが検討されています。
NTMは自然水、土、ほこりなどの環境中に存在すため、日常生活でしばしばNTMを気道に吸い込んでいます。気道は常に外界と通じているため気道浄化作用が備わっています。健康な人では外界からのNTMはこの浄化機能によってまもなく排除されます。なんらかの理由で気道浄化機能が低下すると、気道にNTMが定着し増殖します。これが結節気管支拡張型の肺NTM症で(図4)、近年、中年以降の女性を中心に患者数が急増しています。
図4
一方、線維空洞型は、気道だけではなく肺実質でNTMの増殖がおき、肺に空洞形成をきたし肺の破壊が進行していきます(図5)。
図5
痩せ形の高齢者、肺に基礎疾患を有する人、糖尿病合併など、全身の抵抗力低下が大きな要因と考えられていますが、若者でも空洞形成することもあります。ガイドラインに準じた多剤併用化学療法や、時に外科手術を行うことが必要になります。現在、使用可能な薬剤で完全な治癒に至ることは難しく、有効な薬がなかった時代の結核と同じような臨床経過をとります。病勢をコントロールし肺機能を維持するように努め長期間の管理が必要となります。
肺NTM症や気管支拡張症の診療は疾患の長期経過に対する深い理解が不可欠ですが、経験の豊富な医師は極少数です。当院では、多数例の診療経験に基づいた治療管理を行っています。
文献
1. Kitada S, Maekura R, Toyoshima N, et al. Serodiagnosis of pulmonary disease due to Mycobacterium avium complex with an enzyme immunoassay that uses a mixture of glycopeptidolipid antigens. Clin Infect Dis 2002; 35(11): 1328-35.
2. Kitada S, Maekura R, Toyoshima N, et al. Use of glycopeptidolipid core antigen for serodiagnosis of Mycobacterium avium complex pulmonary disease in immunocompetent patients. Clin Diagn Lab Immunol 2005; 12(1): 44-51.
3. Kitada S, Kobayashi K, Ichiyama S, et al. Serodiagnosis of Mycobacterium avium complex pulmonary disease using an enzyme immunoassay kit. Am J Respir Crit Care Med 2008; 177 (7): 793-7.
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