徳洲会 呼吸器部会|呼吸器専門領域の臨床・研究を推進するため、情報の収集、解釈、そしてその浸透、並びに部会の情報交換と親交を促進します。

お知らせ

徳洲会呼吸器部会 免疫療法など症例発表 肺がん研究会 症例検討会 多職種67人参加

2018.10.22

2018年(平成30年)10月22日 │ 徳洲新聞 No.1156 3面

徳洲会呼吸器部会 免疫療法など症例発表
肺がん研究会 症例検討会
多職種67人参加

徳洲会呼吸器部会は10月13日、京都市内で第10回肺がん研究会・第8回呼吸器部会症例検討会を開催した。肺がんをはじめ呼吸器疾患全般の診療レベルの向上を図るのが狙いだ。徳洲会オンコロジー(腫瘍学)プロジェクトの一環で、医師や看護師、薬剤師、臨床検査技師など多職種67人が参加。肺炎や漏斗胸(ろうときょう)手術、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の症例など幅広い症例を共有し知見を深めた。

「今後も患者さんのお役に立てる活動を」と竹田部長

「今後も患者さんのお役に立てる活動を」と竹田部長

冒頭、呼吸器部会の部会長を務める竹田隆之・宇治徳洲会病院(京都府)呼吸器内科部長が「第10回を開催することができました。今まで演題発表や参加いただいた方々のおかげです。呼吸器部会では多施設を結んだキャンサーボード(各科の医師や多職種が最適な治療方針を検討する会議)にも力を入れています。今後も患者さんのお役に立てるよう部会活動に取り組んでいきたい」と挨拶。

続いて、徳洲会オンコロジープロジェクトの新津洋司郎顧問(札幌医科大学名誉教授)が今後の取り組みとして、蓄積したがん登録情報の有効活用や緩和医療の強化、他領域の活動推進、臨床研究や学会発表の促進などを掲げた。成果の対外周知の必要性も強調した。

ミニレクチャーで講師を務める日比野部長

ミニレクチャーで講師を務める日比野部長

症例検討会ではまず、千葉西総合病院の浅井大智・初期研修医が「潰瘍性大腸炎の治療中に発症し抗好中球細胞質抗体PR3-ANCAが陽性を示した好酸球性肺炎の一症例」をテーマに発表。PR3-ANCAは抗好中球細胞質抗体を指し、陽性は自己免疫異常を示唆する。同肺炎の発症に潰瘍性大腸炎治療薬の関与を疑ったが、投与中止も改善せずステロイド剤で改善。「濃厚な遺伝歴があり自己免疫機序による免疫のオーバーシュート(過剰進行)が考えられました」とまとめた。

湘南鎌倉総合病院(神奈川県)の深井隆太・呼吸器外科部長は「胸肋挙上(きょうろくきょじょう)術(SCE)後に呼吸器感染症の改善が得られた漏斗胸の1例」と題し発表。「前胸部の陥凹(かんおう)が強い漏斗胸の小児患者さんでは呼吸器疾患を繰り返すことがあります」と指摘。肺炎で数回の入院歴がある女児に漏斗胸を治療するSCEを施行、呼吸器症状が改善した。「SCEは従来の方法とは異なり、異物の留置がないため患者さんの負担が少ない」と結んだ。

名古屋徳洲会総合病院の宇賀神基・呼吸器内科部長は「経過観察中に自然消失した肺小細胞癌の一例」を発表。本人・家族の希望で化学療法を行わなかったが、経過観察中にがんが自然消失。「明確な機序は不明」とし、併存疾患に使用していた利尿剤や血糖降下剤による影響の可能性などに関して文献的考察を加えた。

“野口分類”で知られる野口教授が参加

“野口分類”で知られる野口教授が参加

湘南鎌倉病院の田山由美子・放射線腫瘍科医長は「下肢麻痺(まひ)で発症し集学的治療により運動機能が完全回復して長期生存した肺腺癌の1例」と題し発表。転移性骨腫瘍による脊髄(せきずい)圧迫症候群に対し放射線の緊急照射を施行。両下肢麻痺だったが、自立歩行が可能になった。「当院では脊髄圧迫症候群をoncologic emergency(がん救急)と強く認識していたため、連休中の深夜に依頼を受けて緊急照射を実施、全身療法による長期生存につながりました」とまとめた。

4題終えたところでミニレクチャーとして湘南藤沢徳洲会病院(神奈川県)の日比野真・呼吸器内科部長が「日常の肺炎診療に紛れ込むCADM-RPIP」を講演。CADMは臨床的無筋症性皮膚筋炎、RPIPは急速進行性間質性肺炎を指す。症例を提示し爪周囲の紅斑や出血、顔や胸部の皮疹(ひしん)といった特徴的な身体所見などを説明。「肺炎に見える肺炎以外の病気はたくさんあります。また肺炎という診断は多くの場合、暫定的な診断であるのを忘れないことが大切です」と呼びかけた。

宇治病院の若狭亮・呼吸器内科医師は「EGFR-G719A/T790M compound mutationの1例」と題し発表。EGFR遺伝子変異陽性肺がんに対する一次治療は分子標的薬のEGFR-TKI(上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害薬)だが、uncommonmutation(まれな遺伝子変異)に対する治療選択は確立していない。薬剤選択に資する「EGFR遺伝子変異の定量的な解析手法の開発が望まれます」と訴えた。

最新の治療戦略を解説する笠原・臨床教授

最新の治療戦略を解説する笠原・臨床教授

福岡徳洲会病院の栁澤純・呼吸器外科部長は「術後再発非小細胞肺癌に対してNivolumab 投与でCRが得られている症例」を発表。術後再発の非小細胞肺がんにICIのニボルマブを投与。PS(全身状態を示す指標)不良となったため一旦中止したが、その後、再発・転移による所見が消失しCR(完全奏効)。予後予測因子が明らかでないため「症例の積み重ねが重要」とまとめた。

この後、大和徳洲会病院(神奈川県)の杉本栄康・呼吸器内科部長が2演題を発表。ひとつめは「免疫チェックポイント阻害薬投与下の癌性胸膜炎に対して自己血胸膜癒着術が症状緩和に有効であった肺扁平(へんぺい)上皮癌の一例」を口演。「ICI使用下のがん性胸膜炎に対する自己血胸膜癒着術は、治療関連有害事象の危険性が少なく、安全かつ有効な緩和治療の選択肢になり得ます」と示唆。

続いて「免疫チェックポイント阻害薬投与後に小細胞肺癌への形質転換をきたした肺腺癌の2例」。ICI投与中、投与後に非小細胞肺がんから小細胞肺がんに形質転換した2症例を紹介。ICIとの関連性や分子病理学的機序は現時点で不明とし「非小細胞肺がんが治療抵抗性となった際には、耐性化の原因として耐性遺伝子発現だけでなく、形質転換を念頭に再検索が望ましい」と結んだ。

免疫チェックポイント阻害薬で特別講演行う

各発表後には活発に質疑応答。会場には“野口分類”という小型肺腺がんの病理分類で世界的に知られる筑波大学医学医療系診断病理学研究室の野口雅之教授が駆け付け、専門的な見地からコメントする場面も見られた。

最後に和泉市立総合医療センター(大阪府)の益田典幸・特別顧問兼臨床研究センター長が各発表を振り返り総評。

症例検討会終了後には別会場で他団体主催の講演会を開催。竹田部長が座長を務め、京都市内の若手呼吸器内科医・外科医3人が、所属施設での肺がん診療を発表した。

さらに金沢大学附属病院呼吸器内科の笠原寿郎・臨床教授が「免疫チェックポイント阻害薬-非小細胞肺癌の新しい治療選択肢-」をテーマに特別講演。和泉医療センターの福岡正博総長が座長。

笠原・臨床教授はICIの作用機序を解説し、ICIと他の薬物療法を比較した国内外の臨床試験結果などを紹介。免疫反応の抑制にかかわるPD-L1の発現率や、がん細胞の増殖に関与するEGFR遺伝子変異の有無などに応じた非小細胞肺がんに対する最新の治療戦略を説明した。