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徳洲会呼吸器部会 多職種が知見共有 第6回症例検討会を開催

2018.01.15

2018年(平成30年)1月15日 │ 徳洲新聞 No.1116 3面

徳洲会呼吸器部会 多職種が知見共有 第6回症例検討会を開催

第8回肺がん研究会・第6回呼吸器部会症例検討会が京都市内で開催された。徳洲会オンコロジー(腫瘍学)プロジェクトの一環で、呼吸器疾患に対するグループ全体の診療レベル向上が目的。初期研修医を含む医師、薬剤師、看護師など約60人が集まり、肺炎、胸膜炎、肺がん、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の治療効果や副作用など多様なテーマの症例を共有した。

「肺がんキャンサーボードで離島・へき地病院のお役にも立ちたい」と竹田部長

「肺がんキャンサーボードで離島・へき地病院のお役にも立ちたい」と竹田部長

同プロジェクトの新津洋司郎顧問(札幌医科大学名誉教授)は冒頭、「呼吸器部会が先導する形で、消化器がん部会、乳がん部会の活動も進展しています。今後、これら部会を統合した大きな研究会を開くことを構想しています。活発な討議をお願いします」と挨拶。

続いて呼吸器部会の部会長である竹田隆之・宇治徳洲会病院(京都府)呼吸器内科部長も、各部会を統合した研究会の開催を目指すとしたうえで、2017年4月に開始した多施設参加型の肺がんキャンサーボードに言及。「離島・へき地病院のお役にも立ちたいと考えています。オブザーバー(傍聴者)としての参加も歓迎します」と呼びかけた。

まず千葉西総合病院の渡辺泰二郎・初期研修医が「重症呼吸不全を呈した特発性器質化肺炎(COP)の二症例」をテーマに発表。「臨床所見のみで治療を開始せざるを得ない場合もあり、COPは重症肺炎の鑑別診断としても重要」とまとめた。

気管支喘息について講義を行う岩瀬部長

気管支喘息について講義を行う岩瀬部長

湘南鎌倉総合病院(神奈川県)の深井隆太・呼吸器外科部長は「右肺全摘を施行した肺アスペルギルス症の1例」と題し報告。真菌の感染により起こる肺アスペルギルス症患者さんに、後側方切開で右肺を全摘。広背筋で断端を被覆。「広背筋による被覆は致死的合併症につながる気管支断端瘻(ろう)予防に有用」と結んだ。

同院の平井直樹・初期研修医は「両側胸水を呈し局所麻酔下胸腔鏡(きょうくうきょう)で診断したIgG4関連胸膜炎の一例」。「胸水貯留+諸臓器の腫大をみた場合はIgG4関連呼吸器疾患も鑑別に挙げる必要があります」と報告した。

名古屋徳洲会総合病院の宇賀神基・呼吸器内科部長は「自験例を通じた局所麻酔下胸腔鏡検査の有用性」と題し、「胸水検査のみでは原因を特定できない胸水貯留で、有用かつ安全な診断手技と考えられました」と発表。

この後、ミニレクチャーとして、千葉西病院の岩瀬彰彦・呼吸器内科部長が「気管支喘息(ぜんそく)の周辺疾患―common diseaseの落とし穴―」を講義。喘息発症・増悪のメカニズムや診断基準を解説し、注意を要する症例として「難治例・重症例で発作、救急外来を頻回に受診」、「3~6カ月経過しても症状をコントロールできない」、「合併症がある」などを挙げた。

総評を行う福岡総長

総評を行う福岡総長

ここから症例検討会の後半がスタート。札幌東徳洲会病院医学研究所の小野裕介・臨床生体情報解析部部門長が「デジタルPCRを用いた液体生検による耐性遺伝子検出の試み」を発表。高精度のデジタルPCR(遺伝子解析装置)を用いた液体生検により「耐性変異の出現をモニタリングする低侵襲、高感度の検査法として活用が期待されます」とまとめた。

羽生総合病院(埼玉県)の成松裕之・外科後期研修医は「膿胸併発右下葉肺癌、術後化学療法終了後に肺瘻(はいろう)発症し、EWS(気管支充填材)併用手術にて治癒した一例」をテーマに「術後肺瘻を縮小手術で治癒できる可能性を示唆できました」。

約60人が参加し症例を共有

約60人が参加し症例を共有

湘南藤沢徳洲会病院(神奈川県)の前田一成・初期研修医は「ペムブロリズマブに伴う重症筋無力症~免疫関連副作用による重症筋無力症(MG)と特発性重症筋無力症の比較~」。ICIによるMGの特徴などを解説し「筋炎、肝炎を合併したが軽症で、MG自体もステロイドの内服でコントロール良好」と報告した。

八尾徳洲会総合病院(大阪府)の瓜生恭章・内科部長は「PD-1阻害薬により著明な腫瘍縮小効果が得られた肺多型癌2症例の検討」と題し発表。「当院で経験したいずれの症例もPD-L1(PD-1という受容体に特異的に結合する物質)は高発現で、PD-1阻害薬の奏効が認められました。同薬が肺多型がんの効果的な治療法になると考えられました」。

和泉市立病院(大阪府)の福岡正博総長は総評で「今回も内容の濃い、貴重な症例がそろった症例検討会でした。明日からの診療に活用していただきたい」と語った。

 

免疫チェックポイント阻害薬関連で講演行う

ICIの治療効果や副作用などを解説する里内部長

ICIの治療効果や副作用などを解説する里内部長

症例検討会の終了後、別室で肺がん薬物療法をテーマにした講演会が開催(主催は他団体)。京都府立医科大学大学院医学研究科呼吸器内科学の山田忠明講師が「EGFR変異肺がん治療に関する最近の話題―薬剤耐性や免疫療法について―」をテーマに発表。竹田部長が座長を務めた。さらに、兵庫県立がんセンター呼吸器内科の里内美弥子部長が「抗PD-1抗体の光と影―Evidence と実臨床から―」と題し講演、福岡総長が座長を担った。

山田講師は各世代のEGFR(上皮成長因子受容体)チロシンキナーゼ阻害薬の特徴や耐性研究の最新状況を紹介後、EGFR変異肺がんに対するICI治療に言及し「現時点では有望な知見に乏しく、前向き研究などの結果待ちの状況です」と結んだ。

里内部長はICIの治療効果や抗がん剤との比較試験のエビデンス(科学的根拠)、irAE(免疫関連有害事象)などを提示。「ICIの効果が見込める人を、ある程度絞り込むのにPD-L1は有用な指標です」と講演した。