徳洲会 呼吸器部会|呼吸器専門領域の臨床・研究を推進するため、情報の収集、解釈、そしてその浸透、並びに部会の情報交換と親交を促進します。

お知らせ

多様な症例共有し研鑽 第5回症例検討会を開催

2017.08.21

2017年(平成29年)8月21日 │ 徳洲新聞 No.1096 4面

徳洲会呼吸器部会
多様な症例共有し研鑽
第5回症例検討会を開催

第7回肺がん研究会・第5回呼吸器部会症例検討会が7月8日、徳洲会オンコロジー(腫瘍学)プロジェクトの一環で、中部徳洲会病院(沖縄県)を会場に開催された。徳洲会グループの呼吸器診療の質の向上が狙い。肺がんや誤嚥(ごえん)性肺炎、薬剤性肺障害など幅広い内容の症例検討11演題の発表に加え、今回は診療経験豊富な3人の講師が教育講演を実施。医師38人をはじめ看護師、薬剤師、臨床検査技師、診療放射線技師、医療ソーシャルワーカー、CRC(治験コーディネーター)など多職種が計73人集まり活況を呈した。

最新の呼吸器診療の知見を共有するため全国から多職種が参集

徳洲会オンコロジープロジェクトの新津洋司郎顧問(札幌医科大学名誉教授)の挨拶に続き、徳洲会呼吸器部会の部会長である竹田隆之・宇治徳洲会病院(京都府)呼吸器内科部長は「当部会は4月から診療の質の向上に資する取り組みとして、複数のグループ病院をWEBで結び、電子カルテを共有しながらリアルタイムにカンファレンスを行う肺がんキャンサーボードをスタートし、順調に回を重ねています」とアピール。現在、徳洲会5病院が参加している。

また竹田部長は呼吸器部会の学際連携委員長の交代を発表。池原康一・石垣島徳洲会病院(沖縄県)院長から、日比野真・湘南藤沢徳洲会病院(神奈川県)呼吸器内科医長にバトンタッチした。

挨拶に立った日比野医長は「徳洲会グループの呼吸器診療のレベル向上に貢献していきたい」と意気込みを語った。

会場となった中部徳洲会病院の河本宏昭・胸部外科医長は「明日から診療に役立つ話をたくさん聞くことができると思います。活発なご討議をお願いします」と挨拶。

「肺がんキャンサーボードも順調に回を重ねています」と竹田部長

症例検討会では、前半の座長を千葉西総合病院の岩瀬彰彦・呼吸器内科部長が、後半の座長を八尾徳洲会総合病院(大阪府)の瓜生恭章・内科部長が務めた。

湘南藤沢病院呼吸器内科の堀内滋人医師は「Nocardia症に罹患(りかん)したMounier-Kuhn症候群(気管気管支巨大症)の一例」をテーマに口演。喀痰(かくたん)からNocardiaを検出、画像的特徴から基礎疾患としてMounier-Kuhn 症候群があると考えた。「Nocardia症は非特異的な症状を来す診断困難な疾患で、肺に障害が起きることが多いです」と報告。

宇治病院の本田彩・初期研修医は「胸部CT異常影で発見されたSwyer-James syndrome の1例」。Swyer-James 症候群は、細気管支の狭窄(きょうさく)・閉塞による末梢(まっしょう)肺の血流減少と肺過膨張で、労作時の呼吸困難や咳嗽(がいそう)、喀痰などの症状を引き起こす。「肺動脈狭小化をともなう一側もしくは一葉の透過性亢進を認めた際は、Swyer-James 症候群も鑑別に入れるべき」とまとめた。

四日市徳洲会病院(三重県)の豊田國彦院長(内科)は「誤嚥性肺炎50例の考察」を発表。60~90歳代の要介護5で寝たきりの患者さん50人について、肺炎の起因菌などを考察した。

「起因菌は『緑膿菌』、『MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)および緑膿菌』、『MRSAおよび他の菌』が全体の88%を占めていました」と報告した。

「徳洲会グループの呼吸器診療のレベル向上に貢献していきたい」と日比野医長

湘南藤沢病院総合内科の清水実医師は「重症型多発血管炎性肉芽腫症(GPA)の加療中にシクロホスファミド(CPA)による心筋症が合併した一例」を発表。ステロイド単剤で制御困難なGPAに免疫抑制剤CPAなどを投与。心不全を合併、CPAによる心筋障害の可能性を考え、リツキシマブに薬剤を変更。その後、自宅退院。「CPA使用時には心毒性の可能性を想定し、使用中止・他剤への変更などの対応を速やかにとることが重要」と発表した。

千葉西病院の中村俊貴・初期研修医は「当院で経験された薬剤性肺障害の5症例」。3例は漢方製剤、1例は抗腫瘍剤、1例は神経障害性疼痛(とうつう)治療薬だった。「高齢化社会を迎え複数機関からの多剤処方、市販薬やサプリメントの使用頻度が増えており、日常診療での薬剤使用歴の聴取が重要と考えられます」と結んだ。

湘南藤沢病院の日比野医長は「小葉間隔壁肥厚を通して」をテーマに口演。急性呼吸促迫症候群、末梢血好酸球増多をともなう呼吸不全の2症例の診断・治療経過を解説し、小葉間隔壁肥厚の肺CT(コンピュータ断層撮影)所見の読み方や臨床推論の方法論を発表。「検査や治療のメリットとデメリットを理解したうえで、一人ひとりに合わせて検討していくことが、根拠に基づく患者中心の医療であると思います」とまとめた。

和泉市立病院(大阪府)中央放射線科の谷川原竜乙・診療放射線技師は「危険因子を有する肺癌患者に対する定位放射線治療」を発表した。危険因子をもつ早期肺がん患者さんに対し、適切な線量減少を行った定位放射線治療(32.40Gy/4回)を実施。「重篤な有害事象は認められず、三次元照射と同等以上の有効性が示唆されました」と報告した。

東京西徳洲会病院外科の小長谷健介医師は「気道ステントを留置した2例」を口演。肺がんによる気道狭窄に対し、気道ステントを留置した2症例を提示。「全身麻酔下で1例ずつ安全にステント留置を行い、差はあるものの呼吸状態、ADL(日常生活動作)、QOL(生活の質)の改善を認めた2症例を経験しました」と結んだ。

湘南鎌倉総合病院(神奈川県)呼吸器外科の深井隆太部長は「胸骨正中アプローチで気管支処理を行った左肺全摘の1例」を発表。再発を防ぐ目的で腫瘍とのマージン(手術で切除した腫瘍の周辺部分)を確保するため、胸骨正中切開に左前方腋窩(えきか)開胸を加えて左肺全摘を実施。「気管分岐部の視野確保、中枢側での左主気管支の切離に有用でした」とまとめた。

福岡徳洲会病院呼吸器外科の栁澤純部長は「腫瘍崩壊症候群(TLS)を来した非小細胞肺がんの一例」がテーマ。TLSは腫瘍細胞の急激かつ大量の崩壊により惹起(じゃっき)される多臓器障害。「固形がんでのTLSはまれですが、リスク評価と適正な予防を行うことの重要性を認識しておく必要があります」と呼びかけた。

和泉病院呼吸器内科の宮本篤志医師は「Osimertinibが無効となった1剖検例」。肺腺がんに分子標的薬であるゲフィチニブを投与後、PD(進行)となり、再生検の結果をふまえオシメルチニブに変更。再度PDとなった。病理解剖の結果、「右下葉の腫瘍からMET遺伝子の増幅が高度に見られ、オシメルチニブ耐性化の一因と考えられました」と結んだ。

最後に和泉病院の福岡正博総長が「症例検討会、教育講演ともに、とても勉強になる充実した内容でした」などと総括した。

肺結核から最新薬物療法まで 教育講演を3題実施

肺結核をテーマに講演する田村副院長

大隅鹿屋病院(鹿児島県)の田村幸大・副院長兼内科部長は「プライマリケアにおける肺結核の基礎知識」をテーマに講演を行った。

田村副院長は、2週間続く咳嗽、発熱、体重減少があれば肺結核も鑑別のひとつに挙げることや、盗汗(とうかん)、血痰(けったん)、体重減少、結核患者接触歴、上葉の浸潤影の各項目に関して、該当項目が多いほど肺炎よりも結核の可能性が高いことなどを説明。このほか、肺結核を疑う画像所見の特徴などを紹介した。

八尾病院の石原英樹・呼吸器内科部長は「呼吸管理のアップデート」と題して講演。急性呼吸不全に対する治療戦略の考え方をレクチャーし「呼吸不全の治療にあたっては、呼吸性アシドーシス(呼吸がうまくいかず体が酸性になる状態)、高二酸化炭素血症の有無がポイントになります」と強調した。

石原部長は呼吸管理をテーマに講演

このほか、ARDS(急性呼吸窮迫症候群)に対する肺保護戦略や、高二酸化炭素血症のメカニズム、死腔(しくう)換気を考慮した有効分時換気量の計算方法なども講義した。

宇治病院の竹田部長は「肺がん薬物療法の進歩~免疫チェックポイント阻害薬の位置づけ~」を講演。竹田部長はニボルマブやペムブロリズマブといった免疫チェックポイント阻害薬(ICI)に関して、海外の研究成果をひもとき治療成績などに言及。それらの研究成果をふまえ、投与すべき症例や投与を控えるべき症例、用量や投与期間などの観点から解説した。

「扁平(へんぺい)上皮肺がん、非扁平上皮肺がんともに、ICIの奏効群は従来の抗がん剤と比較して長期の奏効期間を望むことができます。3~4回投与時にCTによる評価を検討してPD(進行)でないことを確認することが望ましいと考えます」などとまとめた。