徳洲会 呼吸器部会|呼吸器専門領域の臨床・研究を推進するため、情報の収集、解釈、そしてその浸透、並びに部会の情報交換と親交を促進します。

お知らせ

第6回肺がん研究会/第4回呼吸器部会症例検討会を開催しました。

2017.02.11

2017年(平成29年)1月30日 │ 徳洲新聞 No.1067 4面

徳洲会オンコロジープロジェクト
症例共有し診療レベル向上
第6回肺がん研究会  呼吸器部会が症例検討会

徳洲会グループオンコロジープロジェクトは12月17日、大阪市内で第6回肺がん研究会を開催した。幅広い呼吸器疾患に対する診療レベルの向上が目的。徳洲会呼吸器部会第4回症例検討会をプログラムの軸とし、さらに分子標的薬の最新動向などをテーマとする外部講師の講演を実施。症例検討会は学会の口演(口頭発表)形式で行った。過去最多の76人が参加し会場は熱気に包まれた。

「化学療法が著しく進歩するなか、研究会の継続的な開催は大きな意義があります」と新津顧問

徳洲会オンコロジープロジェクトの顧問を務める北海道大学難治性疾患治療部門分子標的探索研究室の新津洋司郎室長が開会の挨拶に立ち「参加者同士が切磋琢磨(せっさたくま)し、より良い呼吸器診療に資する情報発信などに取り組んでいくことが重要です。今回も活発な討議をお願いします」と呼びかけた。

続いて、徳洲会呼吸器部会部会長である宇治徳洲会病院(京都府)呼吸器内科の竹田隆之部長が「徳洲会呼吸器部会のこれまで・これから」をテーマに講演。冒頭、“組織”としての同部会に着目し、「組織には共通の目標、分業と調整の仕組みが欠かせません」と指摘。共通の目標は、患者さんに質の高い呼吸器診療を提供、徳洲会グループの呼吸器診療のレベル向上、多職種の研鑽(けんさん)や教育などを掲げた。また、分業と調整の仕組みとして、部会内に設置した4委員会の役割などを紹介。活動の展望として呼吸器専門医の育成、肺がん研究会・呼吸器部会症例検討会の継続・工夫、他科との有機的連携の促進を挙げた。情報共有・情報発信のさらなる強化にも取り組む意欲を見せた。

この後、同部会の第4回症例検討会を実施。千葉西総合病院呼吸器内科の岩瀬彰彦部長と八尾徳洲会総合病院(大阪府)内科の瓜生恭章部長が座長を務めた。

呼吸器部会の活動の方向性を提示する竹田部長

和泉市立病院(大阪府)腫瘍内科の長谷川喜一医長は「ニボルマブ投与後に高CK血症を合併し重症筋無力症を発症した1例」をテーマに発表。EGFR(上皮成長因子受容体)遺伝子変異陽性肺腺がんの患者さんに対し、三次治療として免疫チェックポイント阻害薬であるニボルマブの投与を開始したところ、2コース投与後に副作用として重症筋無力症(MG)を発症。「投与にあたっては関係各科の緊密な連携による副作用対策が必須であり、副作用を見落とすことがないよう、慎重な診療態度が求められます」とまとめた。

大隅鹿屋病院(鹿児島県)内科の貴島沙織医長は「両側肺門・縦隔リンパ節腫大による気道閉塞・左膿胸を合併し治療選択に苦慮した肺腺がんの一例」をテーマに発表。左閉塞性肺炎や左胸水などを合併した症例で、気管支ステントを留置し気管支拡張薬の投与などを行った。また抗菌薬により、感染コントロールができ、膿胸の治癒後に標準治療を施行できた。「刻々と変化する患者さんの状態に応じて各種治療の利点、欠点を検討し、慎重に治療を選択する必要があります」と結んだ。

宇治病院の江角隼・初期研修医(1年次)は「肺がんによる気管分岐部病変に対してside-by-side methodで両側主気管支ステントを挿入した1例」と題し発表した。右主気管支などの閉塞や高度狭窄(きょうさく)を認めた非小細胞肺がんの症例。呼吸状態が悪化しステントを留置したものの、腫瘍の進展で高度狭窄を呈したため、2本のステントを並べるside-by-side方式で留置した。呼吸状態が改善し、外来化学療法に移行できた。「中枢気道狭窄症例では、症例に応じた適切なステント挿入が重要と考えられます」とまとめた。

名古屋徳洲会総合病院内科の宇賀神基医長は「高周波凝固鉗子(かんし)による焼灼(しょうしゃく)術と化学療法にて救命しえた肺門部肺扁平上皮がんの一例」をテーマに発表。左肺門部肺扁平(へんぺい)上皮がんと診断した症例で、呼吸状態が悪く人工呼吸器管理となったが、高周波凝固鉗子で腫瘤を焼灼しながら除去、人工呼吸器からも離脱できた。「気管内挿管による人工呼吸器管理の下、酸素濃度40%の環境下で、高周波凝固鉗子による腫瘍焼灼術を安全に施行できました」と報告した。

宇治病院呼吸器内科の竹内真弓医師は「Osimertinib(オシメルチニブ)が奏効したがん性髄膜炎の1例」と題し発表。低分化肺腺がんの症例で、髄液細胞診から腺がんを検出、がん性髄膜炎を認めた。三次治療のエルロチニブ+ベバシズマブ併用療法を副作用で中止した後の再発で、同療法を再開、T790M(遺伝子変異)を認め、オシメルチニブに変更したところ劇的に改善。「double mutation(遺伝子の二重変異)を確認しましたが、エルロチニブ+ベバシズマブ、オシメルチニブともに治療効果を認めました」と示した。

大隅鹿屋病院内科の田村幸大部長(副院長)は「クリゾチニブ、アレクチニブ投与後にPDとなりセリチニブが奏効したALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がんの1例」がテーマ。小脳転移のある症例で、ALK融合遺伝子陽性と判定されたためクリゾチニブを投与。奏効したが再発したため全脳照射を行い、薬剤をアレクチニブに変更した。その後、セリチニブに変更。肺野の陰影、脳転移巣ともに縮小を認めた。「セリチニブは、クリゾチニブ、アレクチニブ既治療例でも奏効しました」。

宇治病院の荒河純子・初期研修医(1年次)は「アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)の1例」と題し発表。ABPAは咳嗽(がいそう)、呼吸困難などの症状を引き起こす。臨床的にABPAと判断後、ステロイドのプレドニゾロン(PSL)の経口投与を開始。組織診で「著明な好酸球浸潤をともなう気管支粘膜上皮」と診断後、抗真菌薬のイトラコナゾール(ITCZ)を併用。「難治性気管支喘息(ぜんそく)ではABPAは鑑別診断として重要で、画像診断で疑われた場合、必要に応じ気管支鏡も検討するべき」と指摘。

各演題を振り返りながら総評を行う福岡総長

千葉西病院の小嶺将平・初期研修医(1年次)は「麻疹とマイコプラズマの重複感染により肺炎、耐糖能異常をきたした一例」がテーマ。他院を受診し肺炎と診断、治療を開始したものの症状改善なく治療困難で同院に転院してきた症例。「麻疹は国内で小流行を繰り返し、今回は海外からの輸入感染も疑われました。成人麻疹でワクチン接種例は症状が非定型的であり、感染対策上、注意を要します」と報告。

和泉市立病院呼吸器内科の清家則孝副部長は「マイコプラズマ肺炎 診断上の問題点」と題し発表。2例の検査所見や治療経過に触れ、マイコプラズマ肺炎の診断手段として、血清学的診断(血液検査)やLAMP法(遺伝子検査の手法)を紹介。

「マイコプラズマ肺炎の画像所見は多彩であり、細菌性肺炎との鑑別は困難です。60歳未満、基礎疾患がない、頑固な咳(せき)、胸部聴診上所見が乏しい、喀痰(かくたん)検査で原因菌らしいものがないなどの項目の大部分を満たす肺炎では、マクロライド系抗菌薬の処方を開始し、2日後に経過とLAMP法の結果をふまえ判断するのが望ましいと考えられます」と結んだ。

最後に和泉病院の福岡正博総長が各演題を振り返りながらポイントを解説するなど総評を行い、「今回も活発な症例検討を行うことができました」と労(ねぎらい)の言葉をかけた。

分子標的薬の最新動向

分子標的薬の耐性機序などについて講演する光冨・主任教授

近畿大学医学部内科学腫瘍内科部門の田中薫講師が基調講演、近畿大学医学部呼吸器外科学の光冨徹哉・主任教授が特別講演を行った。

田中講師のテーマは「非小細胞肺がんの再生検について~タグリッソ承認後の現状~」。

タグリッソ(一般名:オシメルチニブ)は、上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)に対する薬剤耐性を獲得した非小細胞肺がんを対象とした分子標的薬。使用するには適応判定のため再生検を行う必要がある。

田中講師はオシメルチニブの治療効果や、組織検体と血液検体による再生検の比較、再生検をめぐる国内の状況などを解説。「タグリッソ承認後、再生検はEGFR遺伝子変異陽性肺がんの治療方針決定のために必須の手技と認知され、積極的に行われています」と報告した。

光冨・主任教授は「EGFR-TKIの耐性機序とその治療戦略」と題し講演。まず、がん細胞中のEGFR遺伝子が変異し、EGFR-TKIに対する耐性が生じるメカニズムなどを解説。さらに、EGFR-TKIの耐性を獲得した肺がんに対する臨床試験結果や治療戦略などを紹介した後、第3世代EGFR-TKIであるオシメルチニブに言及。開発工程や奏効率、副作用など臨床試験の解析結果を紹介。それまでの標準治療よりも無増悪生存期間の延長など有効性が認められていることなどを紹介した。

そのうえで、EGFR遺伝子変異陽性肺がんの一次治療として現在、ゲフィチニブやエルロチニブ、アファチニブが標準治療で使われているが、「オシメルチニブを一次治療で使ったらどうなるかという臨床試験が行われています。今後、標準治療は変わっていく可能性があります」と示唆した。